恋愛と善悪観

Twitterのタイムラインを眺めていると、日常的に「付き合いました」「別れました」などの報告を目にします。

 

あれ?この人こないだ付き合ったって言ってたばかりじゃなかったっけ。

そんなとき、あなたはこんなこと思ったことないでしょうか?

 

「いい年してそんなすぐ別れるなんて。どうせ適当な恋愛してるんでしょ(笑)」

 

私は正直そう思ったことあります。それがまさか、30代半ばの自分が当事者になるとは。

 

(1)別れ

付き合ってもうすぐ3か月となったある日のこと。いつものように彼氏に「おはよ~」とLINEを送りました。

 

おはようとおやすみのLINEは毎日行っており、普段は向こうも普通に「仕事行ってくる~」「疲れた~」などと返すやりとりをしていました。

 

ただしこの日は違いました。

 

「おはよ ずっと考えてたんだけど、前の喧嘩のあとから、これ言ったら怒るかなとか考えてたら怖くなってしまった。会いたくない。もう終わりにしたい。」

 

えっそれ「おはよ」から繋ぐ内容?!Aクイックが華麗過ぎない?!

と一瞬思ったのですが、内容が内容なので、真剣に

 

「とりあえず日にち決めて一回話したい」

 

と返しました。が、「会うと話したいことが話せなくなるから」などと言われ、結局会えずじまいのまま別れることに。


しかもそのLINEを向こうは仕事の休憩時間に送ってくるというお粗末っぷり。最後のメッセージは「そろそろ仕事戻る(´・_・`)」でした。なんだその顔文字ふざけてんのか?


いくらなんでも切り捨て方が雑過ぎる。そもそもお前喧嘩してからも俺にマッサージさせてたじゃねえか。

 

とまあ、あまりに急かつ理不尽すぎるフラれ方だったのでめちゃくちゃ凹みました。

その後なんとか立ち直ったのですが、その辺はまた別の機会に。

 

今回は、別れる原因になったと言われた「喧嘩」の背景って、よくよく考えると「善悪観の差」の問題だったのでは?と思ったので、この文章を書いてみることにしました。

 

(2)最初の違和感

付き合って一か月くらいのころだったでしょうか。

彼が私の家に泊まりに来ていて、たしか朝方のことだったと思います。

 

私のベッドで二人並んで寝ていたのですが、目が覚めた彼はスマホをいじっていたようです。

 

私のベッドは頭側に小物を置けるスペースがあるタイプでした。彼は後ろ手でスマホをそのスペースに置こうとしましたが、置き場は細く、誤ってスマホはベッドの向こう側に落ちてしまいました。

その音で私も目が覚めたのですが、そこで彼が言った言葉が今も忘れられません。

 

「このベッド嫌い!」

 

は?急に3歳児になったの?

 

反射的に私は言いました。「まずは『ごめん』でしょ」と。

 

彼は「なんで怒ってるの」的なことを言っていたと思います。

スマホは私がベッドの裏側に回り取ってあげましたが、最後まで「ごめん」の一言はありませんでした。「ありがとう」もなかった気がする。

 

今書いてみると、起こった事象自体はただスマホを落としただけという、とてもとてもどうでも良い微かな出来事です。

 

でもこのとき、心の中に僅かながら、恐怖感にも似たモヤモヤが生じたのを覚えています。

 

自分なら、スマホを落として音を立ててしまった時点で、もはや反射的に相手に謝ると思うし、それくらいは「当たり前」のことだと思っていたからです。

 

そしてその「当たり前」がないどころか、私の家具にケチまでつけるこの人とは、努力では超えられない壁があるのでは・・・?と一瞬思ったのです。が、付き合いたてだったこともあり、考えないようにしました。

 

そのあと再度寝て、起きたときにはそのこともぼんやりと薄れていました。

 

(3)喧嘩1

彼が別れるきっかけになったと主張する喧嘩は、付き合って2か月くらいのころに2回ほど起こりました。

 

その日は彼と一緒にチーム制のゲームをボイスチャットを繋ぎながらやっていました。戦況が不利になると、他の味方に対して(向こうに声は聞こえない)
「死ねや」「あーこういうやつ味方にいるとマジやる気なくすわー」などの言葉を吐きだしました。

 

その声は私には聞こえます。私に言われているわけではないですが、さすがに不快になってきました。

「そういうの良くないよ」とやんわり注意するも、彼は聞く耳を持たず。


ついに私がキレてしまいました。
彼いわく、「疲れてるからつい口が悪くなってしまった」とのこと。

これが1回目の喧嘩です。

 

この日は結局1時間後くらいに私が謝った記憶があります。自分がどこを不快に思ったか、伝え方も曖昧だったし、怒る必要はなかったのかもと思ったからです。

 

でも向こうは、「喧嘩はいやだよ」って感じのことを言ってました。正直こいつ反省してねえなって思いましたが、こういうのは我慢することなのかなと思い、とりあえずでなあなあにしてしまいました。

 

(4)喧嘩2

喧嘩1から数日たったある日、「冷凍のちょっと高いクリームパンを買ったので、一緒に食べよう」と話しました。


すると向こうからは「えー冷凍とかまずそう。冷凍じゃないやつないの?」と返答。
「すでに買ったんだからそんな言い方しないでよ~」と冗談っぽく言った(つもりだった)が、「正直な感想じゃん」と返ってきました。

 

その瞬間、一気に悲しみと怒りが同時にこみ上げてきたのを覚えています。

 

自分が好きなものや、相手に渡そうとして手に入れたものを、否定されて悲しくなった経験はだれでも一度はあると思います。

 

一緒に食べたいって言ってるんだから、断るにしても言い方考えてよって話をしたら、「一緒に食べたいなんて、それはそっちの都合でしょ?」って言われもう駄目でした。

 

その後向こうから「冷静になろう」とのことでしばらく連絡を絶つことに。
が、1週間後、なんやかんやで連絡をこちらからとってしまいました。

 

結局これも、なあなあのまま片付けようとしてしまいました。それからは何度か(こちらは)普通に会っていたのですが、おそらく向こうはずっとこの件を引きずっていたのでしょう。

 

(5)善悪観

ここからは私の持論ですが、人間は「悪いこと」だと思っていてもついついやってしまうことがあると思うのです。


疲れててついそっけない返事をしてしまった。ついカッとなって暴言を吐いてしまった。とか。


もちろんそれが相手を傷つけることになった場合、謝ってもすべて元の状態に修繕されるわけではないとは思うし、
場合によっては取り返しがつかないことになったりもするけど、それでも反省できるなら前に進めるのだと思います。

 

でも、そもそも私が思う「悪いこと」を向こうは「悪いこと」だと認識していない場合、溝はどうにも埋まらない。これが私の言う善悪観の差です。

善悪観とは言いましたが、トラブルのもとになるのはたいがいそのうちの「悪」のほうです。

 

よく「好きなものより嫌いなものが一致している方が関係が続きやすい」と聞きますが、こういうことなのかもしれません。

 

クリームパンの件では、彼の答えが「今となっては配慮がなかったと思ってるが、あのときはつい言ってしまった」だったらすぐ許そうと思っていました。
が、向こうは「正直に言っただけ。何が悪いの?」「これで怒られたら、これから疲れてるとき素直にしゃべれなくなるよ」とのことでした。

 

親しき中にも礼儀ありって言葉を知らんのか?

コミュニケーション初心者か?
無神経と素直をはき違えてるんか?

根本的に「相手視点に立つ」考えがないんか?

などと当時は思いました。

 

でも別れてから、よくよく考えると、善悪観に大きく差がありすぎるときにこういうことが起こるのかも・・・と思いました。

 

(6)そもそもあった差

善悪観の差について、はっきり違和感を覚えたのは例のスマホを落とした件ですが、彼の行動に関しては他にもいろいろありました。

  • 人とすれ違う路上などで煙草を吸う
  • 旅行先の部屋が禁煙だったのに煙草を吸う
  • 吸殻をゴミ捨て場(ゴミ箱ではない)にそのままポイ捨て
  • 大型ごみを不法投棄した経験をこと武勇伝のように語る
  • マックで紙ナプキンを必要以上にかっさらってくる
  • 乙武さんの動画を観て馬鹿にして笑う

 

一番いやだったのは最後のやつかなー。

 

私自身、軽度ですが身体障害者です。歩き方が変です。彼もそれを知っていたのですが、その私に向かって、乙武さんが運動する動画を見せ、「この動きめっちゃウケない?」と言ってきました。

私は「たぶん体幹がすごいね」と返すのが精一杯でしたが、彼は「マジレスしないでよ」と言っていました。

これは私もさすがにちゃんと不快を伝えるべきでした。

 

難しいのが一番上のたばこの件ですね。私自身は一緒にいる人がたばこを吸っていてもそこまで迷惑に思わないし、直接被害を被らないのだけど、上記のような行為は正直「恥ずかしい」。たばこの煙を嫌がる周りの人にとっては迷惑だし、場所によっては単純に条例違反です。

 

でもこういう不快をどう扱うかって意外と難しいと思います。

 

「勝手に不快に感じてるだけじゃないの?」と言われるのではないかということです。

実際、彼は喧嘩1(ゲーム中の暴言)のときには、暴言を吐いた対象には聞こえていないのだからいいじゃん、と言っていました。

 

ただ、上に挙げたどれも、程度の差はあれど大多数の人は「悪」とみなす行為ではないでしょうか。私もそうです。ついやってしまったことがあったとしても、心の中で「悪いことをした」と思う人が多いと思います。

 

おそらく彼は、これらを「悪」だと認識していなかったのではないかと思うのです。そうでなければ、付き合ったばかりの彼氏の前でそんなことできないでしょうし。

 

これは半分恨み節ですが、彼は客観的に想像する能力が極めて低かったのだと思います。自分の行動を周りがどう思うか想像できない。

 

例えば、大多数の人が「悪」だと認識している行為を、自分は「悪」だと思っていなかったとしても、想像力があれば「どうやら周りの人はこれを『悪』とみなしているようだ。これをやると周りから悪者に思われるな」という心理が働くと思います。なので、そのような行為は人目につかないところでこっそり行うものだと思います。

 

(7)多数派と少数派

社会では一般的に、多数派が「悪」だと認識していることが、法律やマナーによっても「悪」だと定義されていることが多いと思います。

(順序が逆だったり、グレーなものや例外もあるとは思いますが)

 

ただ、カップルという閉じた世界で見た場合、1対1の関係ですから、そこに「多数派」などは存在しないです。

なので善悪観の差を、多数派か少数派か、という観点からは解決しづらいと思っています。

カップルで善悪観に差があったとき、周りの人にも聞いてみて、どちらが世間の多数派なのか判断することは可能ですが、結局その結果もあまり意味を持たないと思っています。

 

なぜなら善悪観は変えられないからです。

 

(8)善悪観は変えられない

まず、時間的な問題です。善悪観はすぐに変わるものではないと思います。そういった価値観は、幼少期から社会性を学ぶ中で形成されていくものだと思います。少なくとも5年10年といった単位でゆっくり変わっていくもので、しかも大人になってからはそうそう変わらないものでしょう。

 

そもそも根本的に他人が個人の考え方を変えることは難しいと思っています。それどころか、本人が変えようと思ってもなかなか変えられないものではないでしょうか。

 

長い年月を経て結果的に「変わる」ことはあっても、「変える」ことはそうそうないと思うのです。

 

(9)どうするべきか

善悪観に差があり、相手の行動に不快感を覚えた場合、取れる行動は大きく3つなのではないでしょうか。

 

1.受け入れてもらう

2.我慢する

3.離れる

 

1は「あなたはこれを悪いことだと思ってないけど、私は思っている(不快になる)」ことを伝え、相手に「共感はできないけど、理解はできる」的な状態になってもらう方針です。

相手の善悪観自体は変えられないけど、理性によって行動を変えてもらう方法だと思います。

 

ただ当然本人の根本的な考え方に反するものになるので、多少のストレスはあるでしょう。そのコスト(ストレス)を払ってでも、相手を大事にしたいか、という部分が判断基準になるのだと思います。

 

2はその差を受け入れ、とにかく耐える方針です。

不快に思うことがあっても、話し合えば、相手に悪意がないことまでは分かるかもしれません。ただそれでも不快に思うのは変わらないのですけどね。

実際うまく行っているカップルでも、多少はこういうものがあるのでしょうかね。

 

3は最終手段、距離を置く、別れるという選択です。今回私はこうなってしまったということだと思います。

 

(10)結論

私は1の、善悪観のすり合わせがきちんと行えていなかったのだと反省しました。

怒りの表現は相手がこちらの感情を理解する上での妨げになります。

 

正直、彼は別れるべきクソ野郎であったことは間違いないと思いますが、それでも彼の視点からすると私がヒスってるようにしか見えなかったのかもしれないし、私が理解してもらえるよう努力する余地はあった気がします。

 

ただやっぱり、もともと持っている善悪観が近いに越したことはないのかなあと。

完全に一致する相手は存在しないと思いますが、それでもなるべく近いほうが不要なストレスがかからずに済む気はします。相性適正のようなものだと思います。

 

付き合う相手に求める条件として「一般常識のある人」を挙げる人もいますが、それもこういうことなのかもなあとちょっと思いました。

 

みんなこんなことは若いうちに感覚的に分かっていることなのかもしれません。

それを30代半ばにしてようやく気付いたわけですが、それでも気づくことができて良かったかなあと思います。

 

こうやって文章にして書くことで、自分の考え方のクセみたいなものも見えてきました。また、今回の記事は完全に私の主観です。基本的に起こったことは事実ではありますが、彼からはまた違った見え方があったのでしょう。くたばれ。

 

いろいろ書いてきたけど、また誰かを好きになったら、結局こんなこと全部忘れちゃうんだろうなあ・・・。幸せになりてえ。

 

おしまい